Together Through Life

 

みかづき

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母が貸してくれた森絵都『みかづき』読了。
学習塾黎明期から約50年、教育を背景にした親子3代に渡る大河小説なので、467ページだけれどずいぶんとボリュームを感じる。
著者の教育への思いは溢れるが文体の軽快なタッチによってそれは決して押しつけがましくは感じられず、一つの家族の確執、結びつき、あらゆる困難を迎え飲まれ乗り越えつつ、一つになって転がり続ける姿が各時代ごとに主観を変えて描かれ、清々しいラストシーンまで楽しい読書だった。
小説はその非日常の度合いにもよるけれど、日常の中にもう一つの世界を生きさせてくれ、この作品に生きている間僕はとても気持ち良く過ごせた。そういう面でも素敵な作品。
あと個人的に僕は小学校受験から経験しているので、結構小さいころから塾通いをしていた。塾に通うのは嫌だったこともあったけれど、塾でしか出会えない友人も出来、楽しい思い出もたくさんある。その頃を思い出し、少々ノスタルジックにも耽った。

 

『野火』再読

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この間スコセッシの『沈黙-サイレンス-』を観る前にと遠藤周作『沈黙』を読み返したばかりでまだその映画も観にいけていないんだけど、今度は塚本晋也監督『野火』が観たくてその前にと、これまた四半世紀ぶりくらいに大岡昇平『野火』を本棚の奥から引っ張り出して再読。そしてまた圧倒的にぶっ飛ばされる。すごい。
描かれているのは極限状態、日常の目移りするあれやこれやを全て剥ぎ取られ、他者すらもお互いに自身の孤独へと追いやる存在になった剥き出しの人間の精神。それは冷静なのか錯乱しているのか、それすら分からない。人間として正常に生きているのか狂っているのか…。著者は圧倒的筆致で極限の精神状態に迫真し、その核を炙り出す。見えてくるのは、狂人か、神か。
『沈黙』といい『野火』といい、我ながら10代のころは深く激しい読書体験をしてきたんだなぁと思った。そして、こんなに苦しく重い小説なのに、この2作とも読むのが楽しいという逆説的な体験に驚いた。要はそれこそが名作ということなのだろうと思う。
でもさすがに重いのが続いたので、次はちょっと軽めの作品を読もう。

 

沈黙

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映画を観にいく前に本棚から遠藤周作『沈黙』を引っ張り出し、読む。前に読んだのは10代の頃だから、30年近く振りの再読。
キリスト教信者にはもちろん、そうではないすべての読者に人間の根源的な部分を問う、やはり傑作だった。信じること、疑うこと、そして救われること。人は誰もが己の持つ弱さのために苦悩し、それを克服するためにまた懊悩する。ロドリゴが踏絵に足をかけようとする瞬間には、やっぱり30年前と同じように涙が溢れ出た。
テーマ的にはもちろん、小説的技術としての素晴らしさには今回の再読で初めて気付いたかも知れない。擬似歴史資料的な「まえがき」と最後の「切支丹屋敷役人日記」ではその「資料」的な淡泊さで作品にリアリティを与え、まえがきの後に置かれた「セバスチャン・ロドリゴの書簡」で読者をロドリゴの視点に引きずり込み、その後の三人称で今度は読者を少し引かせて俯瞰的にロドリゴを、物語を観させる。このような変幻自在の距離感の操作は、著者に類稀な小説的技術の力量があってこそだろう。
さて、この素晴らしい傑作小説がスコセッシによってどんな映画になっているか。いつ観にいこうかな。

 

シービスケット

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父が貸してくれたローラ・ヒレンブランド著、奥田祐士訳『シービスケット-あるアメリカ競走馬の伝説』を読んだ。1930年代アメリカに実在した伝説の名馬シービスケットと、彼に人生を賭けた人々の物語。確か映画化もされているけれど、そっちは観ていない。
ただ本作を読めば、映画の方は観なくても良いかも知れない。それほどまでによく出来たノンフィクションで、余計な感動を煽ることなく、淡々と綴られる彼らの生涯からは自然にじわりと感慨が巻き起こる。
それにしてもシービスケットだけではなく、馬主、調教師、騎手たちを含めたその波乱万丈の人生には驚く。まさに事実は小説より痛快なり。
最後に彼らの余生が描かれているのも良かった。波乱万丈を超え、華々しい瞬間を迎えたあとも、人も、馬も、その後も人生は続くのだ。

 

読んじゃいなよ!

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高橋源一郎編『読んじゃいなよ!-明治学院大学国際学部高橋源一郎ゼミで岩波新書をよむ』を読んだ。
明治学院大学の高橋源一郎ゼミ生が指定された岩波新書を読み込み、その著者を招いての質疑応答の様子が描かれる。選ばれたのは鷲田清一『哲学の使い方』、長谷部恭男『憲法とは何か』、伊藤比呂美『女の一生』。それぞれ「哲学教室」、「憲法教室」、「人生相談教室」となる。
なるほど、著書を深く読み込んだだけあって、それぞれの対話は真剣味を帯び、先生たちからは深い語りが得られる。とりわけ長谷部恭男の憲法観には唸った。
それぞれの対話の合間に学生たちによる岩波新書と自分の短い文章が差し込まれているのだけれど、本の感想というよりも自身の人生や生活を顧みるものになっていて興味深かった。まだまだ若い彼らだからこそ、持ち得る悩み。本を読むことによってそれはさらなる袋小路に入ることになるかも知れないけれど、自身の内面を見つめることになるかも知れない。それは読んでのお楽しみという意味でも、とりあえず「読んじゃいなよ!」というわけだ。
僕ももっと若いころからたくさん本を読んでおけば良かった…。

 

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