Together Through Life

 

朝露通信

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保坂和志『朝露通信』を読む。著者が幼稚園、小学校時代を過ごした山梨、鎌倉の、そのときの時間、風景、仲間、空気、思いが、光に照らされる朝露のようにキラキラと描写される。
あとがきで著者も語っているように、「この小説の主役は語り手の“僕”でなく、僕が経てきた時間と光景だ」。そして、それを読む僕たちの心に去来するのは、僕たち自身の少年少女時代のキラキラだ。著者と僕とは年代も過ごした場所も違うのに、読み進めるうちにあの頃を思い出し、それが小説への共鳴となる。
記憶というのは理路整然と整理されたものではもちろんない。だから著者はそのように描く。あちらこちらへと場所を変え、時間も歳もひらりと飛び越えてしまう。だって、それが記憶だから。それが、思い出だから。

この文章が大好き。

「小学校の子どもたちが二人か三人、せいぜい四人ぐらいでおしゃべりしながら帰ってくるのが僕は大好きだ、…まさかこの時が人生の最も幸せな時間のひとつだなんてそのときは思いもしない、大人になってもそんなこと思わない人がほとんどかもしれないが僕はそうだ。」

人はそれぞれ自身の経てきた「時間と光景」を持ち、それが人生の主役となる。だから過度にノスタルジックに描写しなくても、こんなにも切なく温かい気持ちになる。
もっと歳をとり、自分の「時間と光景」がもっと増えたら、その都度にまた読み返したくなる作品。
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