Together Through Life

 

想像ラジオ



いとうせいこう『想像ラジオ』を読んだ。
東日本大震災で被災し、愛する妻子と離ればなれになった死者が、津波に流され引っ掛かった杉の木のてっぺんからDJとして想像のラジオを発信する。その語り口は軽妙でポップだけれど、どこか悲しみに満ちている。
あの未曾有の大震災を題材にすることはとても勇気のいることだと思う。下手すれば「外野の感傷」に過ぎないと、被災者の方たちから一刀両断に斬られる可能性もある。それを著者はきちんと踏まえ、第二章で早くもそれを自己批評のように問い詰める。その問いは切実で、効果的に作用している。
当たり前だけれど生者と死者の間には乗り越えることなど決して出来ない決定的な断絶があり、言い換えれば生者と死者は絶対的他者でしかありえない。でも、著者はそこに微かに潜むコミュニケーションの可能性を想像する。だからDJアークは天と地のちょうど中間にある杉の木の上から想像し、発信し、生者にも死者にも語りかけようとするのだ。そしてそれを見つめるハクセキレイの物語とDJアークの想像ラジオとが繋がったとき、それは文学的カタルシスに近い美しさで物語を豊かにする。
杉の木のてっぺんから空を仰ぎ見ることと大地を俯瞰すること、両方を行うことは決して不可能ではない。だからせめて、想像し続けよう。
Comments

Body

« »

06 2017
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
profile

telltell72

Author:telltell72
welcome!

archives
tweets
検索フォーム
counter