Together Through Life

 

愛に乱暴



吉田修一『愛に乱暴』を読んだ。
描かれるのは夫の不倫から発展する離婚騒動。姑との確執、舅の介護。東京近郊の旦那の実家の離れに住む妻の一人称語りと彼女が紡ぐ日記が交互に配置されるという構成で、読み進めるうちに読み手は違和感を覚え始め、やがて重大な勘違いをしていることに気付かされる。この辺りの構成力と筆力は見事という他ない。
設定自体はメロドラマのようだが、一人称語りによる妻の心象描写とそれによる読者の導き方が秀逸で、彼女が正常なのか気が狂っているのかすら分からなくなる。そして、彼女の足元にぽっかりと空いた(彼女が開けた)穴の存在が、この作品を単なるメロドラマからより大きく深い男女の愛憎劇へと高められている。
それにしても全編に通奏低音のように響く居心地の悪さ、不安感は初期の『パレード』などを想起させ、その感覚が嫌いではなかった吉田修一ファンとしては堪らない作品。
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