Together Through Life

 

空白を満たしなさい



平野啓一郎『空白を満たしなさい』を読んだ。『ドーン』で提示され、『かたちだけの愛』で展開され、新書『私とは何か』で解説された「分人主義」を全面に押し出し、人間の生死に絡めて深く掘り下げた小説。
死んだはずの人間が突然生き返るという奇想天外な設定にも関わらず、そういった現象に関わる人々や世間の反応はとてもリアリティがあり、特に作品前半に漂うどこか不気味とも言える雰囲気を醸し出す著者の物語手としての手腕に唸る。ここ最近の作品に見られるエンターテインメント性にもさらに磨きはかかり、読みやすい文体でありながらも描かれる暴力による痛み、象徴的「父」による暗い死への誘いとその超克、「生きる」ことの意味を深く考えさせるテーマとそれによりもたらされる喜びといったものたちが深く心に届き、エンターテインメント性は見事に文学に昇華されている。
ただ、後半になるに連れ著者がしつこいくらいに繰り返す「分人主義」が登場人物による台詞によって(それこそしつこいくらいに)声高々に語られ、少し説明的に過ぎるのではないかという印象もある。文学的余韻を残すラストシーンによって解消されなくもないのだけれど…。
Comments

Body

« »

10 2017
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
profile

telltell72

Author:telltell72
welcome!

archives
tweets
検索フォーム
counter