Together Through Life

 

オスカー・ワオの短く凄まじい人生



ジュノ・ディアス著、都甲幸治と久保尚美訳『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』読了。
オタク系・サブカル系知識が至る所に散りばめられ、それについての訳者割注の数もすごい。それもこれも主人公オスカーが太った童貞で、のめり込む趣味がSF、アニメ、RPGという典型的オタクだから。
でも、本書が描くのはもちろんそれだけの世界ではない。あくまでもトルヒーヨという独裁者によるドミニカの暗黒の時代、彼の死後にもその陰を落とす親子3代の悲劇的人生を描いているのだ。
フク、マングース、顔のない男。謎めいた暗喩を全て読み解くことは日本人である僕には不可能だけれど、トルヒーヨ独裁にまつわる予備知識も著者による欄外注記(これがまた長い)で一通り知ることができる。そういった暗黒時代のドミニカンの悲劇を描いているにも関わらず読んでいてそれほど絶望的にならないのは、もちろん素晴らしいユーモアにも依るけれど、主人公オスカーが所謂日本的なオタクではなく、英語で言うところのnerdだからというのも大きい。その違いは簡単に言うと、日本的オタクが二次元の女性を愛するのに対し、nerdはあくまで(ドミニカンだし)三次元の女性を求めるということ。つまりオスカーはオタクでありながらも実際の女性を求め、勇気と行動力を発揮するのだ。それはこの素晴らしい小説の間違いなく要となる部分で、だからこそ僕らは親子3代に渡る悲劇的道のりを見せられてもなお、オスカーの最後の行動に感動する。
このような小説がアメリカでベストセラー。一体どういう印象をアメリカ人が持つのかとても興味深いけれど、残念ながら僕には一生分からない。でも、なるほどこれがラテンアメリカ文学か、と遠い日本の国から秘かに感動してしまった。
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