Together Through Life

 

本へのとびら



宮崎駿『本へのとびら――岩波少年文庫を語る』を読んだ。表題通り、著者自身が読んだ或いは読んでいなくても信頼する人が薦めるから間違いなく素敵な本だろうという岩波少年文庫50冊を挙げ、それぞれに短い推薦文が寄せられているのが前半。
そして後半部は著者と児童文学との関わり、挿絵の素晴らしさ、父、震災後の日本などについてのエッセイ。
最初の50冊には僕自身読んだものも読んでいないものも含まれているけれど、短いながらもその作品をとても愛おしく思っていることが伝わる推薦文によって、大人になった今でも改めて読んでみようという気持ちにさせられる。
そして、特に興味深いのは後半のエッセイ。宮崎駿らしい、他とは一線を画す揺るぎない視線ながらも、その眼差しはどこか温かいのだ。特に子どもに対する思いは深く、優しい。

「要するに児童文学というのは…人間の存在に対する厳格で批判的な文学とはちがって、『生まれてきてよかったんだ』というものなんです。」
「子どもにむかって絶望を説くな」

というように、特に大震災以降の日本を覆う「生きていくのに困難な時代」とそれに対する世間の甘さには厳しい態度を示しているけれど、そんな世の中にも子どもは存在する。そして、彼らが未来を象徴する存在である限り、「ふだんどんなにニヒリズムとデカダンにあふれたことを口走っていても、目の前の子どもの存在を見たときに、『この子たちが生まれてきたのを無駄だと言いたくない』という気持ちが強く働くんです」と言う。とても共感する。
言葉を変えるならば、子どもたちこそ僕たち大人の荒んだ心、病を癒し、それでも生きていく勇気と覚悟を与えてくれる存在なのだということ。「生まれてきてよかったんだ、と子どもにエールを送るのが児童文学」ならば、生まれてきてよかったんだと僕たち大人にエールを送ってくれるのが子どもたちなのだ。僕たちはこのエールに応えるため、ただ日々を懸命に生きるしかない。

この著書以外でも繰り返し著者は「今ファンタジーは作れない」と言っているけれど、いつかまた宮崎駿にはとびっきりのファンタジーを描いてほしいし、そういうときがまた訪れるように僕たち皆がこの困難な時代を生きなければならないのだと思う。
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