Together Through Life

 

わたしを離さないで



カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳『わたしを離さないで』を読んだ。
抑制の効いた語り口で、丁寧に、ミステリアスに描かれる世界はどこか風変りで、読み進めるに連れて事態の全貌が明らかになっていく。それは驚愕の世界なのだけれど、著者の語りは最初から最後まで振れることなくあくまで静かで繊細だ。だからこそ、描かれている世界、事態の不自然さは浮彫となり、登場人物それぞれの運命に戸惑う。
ただ、やがて読み手はその世界の違和感を(受け入れるところまではいかないまでも)設定として理解し、そのあまりにも悲しい運命に寄り添い、それでもそこで感情を行き来させ人と交流し、日常を生きる登場人物たちから滲み出るリアルに魂を揺らされ、静かに感動する。
そして、気付く。問いかけられているのは、僕たちなのだ。ここで生きている人物たちと僕たちの違いとは何か。「受け入れる」、「赦す」とはどういうことなのか。その上で「生きる」こととは。
深く静かな感動が心にさざ波を起こすラストシーンから、この先もずっと考えさせられるテーマが残る、さすがの名作。
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