Together Through Life

 

平成猿蟹合戦図



僕にとって待望の吉田修一の新作『平成猿蟹合戦図』読了。
五島列島や秋田から上京し、歌舞伎町に生きる人々。それぞれに生きる上での苦悩や秘密を背負い、それでも懸命に生きていく善良な老若男女8人の群像劇。
歌舞伎町での日々を中心に、それぞれの人物や相関、機微を描く前半が素晴らしく、この先の展開を期待させる。
そして、後半。帯にあるように、善良な人々は猿蟹合戦のごとく出会い、絡み合い、協力し合い、自然にさらに善良で前向きな「蟹」を助け、やがて世に蔓延る狡賢い「猿」を退治する。その流れは爽快で「スカッと」はするけれど、それだけではやっぱり少し物足りない。
『パレード』や『パーク・ライフ』、さらには傑作『悪人』で見せた、著者らしい人間の本質を見つめる視線が、本作ではあまりにもストレートで、薄っぺらいのではないか。だから『悪人』以前に感じた読後のなんとも言えない気持ちの悪さとともに深く考えさせられる余韻とは真逆の、シンプルな「スカッと」した気分のみが残る。
著者の新境地と言えばそうなのかも知れないけれど、ちょっとこれは勢いに任せて書かれた部分(後半)がとても大きい作品のように感じる。あるいはそれこそが著者の新たなるターゲットなのだとしたら、僕としては少々物足りないかな。別に読後に「スカッと」するのが悪いわけではなく、それとともに吉田修一が本来持っていた人間の心の奥底を突き刺すように見つめ、描く、それゆえに読者が射すくめられるような迫力をもっと期待したいのだ。
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