Together Through Life

 

最愛の子ども



松浦理英子『最愛の子ども』を読んだ。寡作の作家らしく前作『奇貨』から4年ぶりの新作長編。
著者はデビューからその形こそ変えてはいるが一貫して性的、肉体的、精神的な繋がりを従来の固定観念から切り離し、性器中心主義から離れ、恋愛中心主義からも離れ、種中心主義からすら離れてきた。それでいてそこはかとない性愛、セクシャリティの関係性を描き続けてきた。今作でももちろんそれは引き継がれ、さらにこれはもう驚くべき傑作の域に達しているのではないか。
描かれるのは高校2年生から3年生になる時期の女子高校生たち。語られるのは彼女らの中にいながら疑似家族として父、母、王子様を演じ、演じさせられる3人で、語るのはそんな「わたしたちのファミリー」を含む「わたしたち」。「わたしたち」にはそれぞれ名前も性格も与えられてはいるけれど、物語の中に「わたし」は存在しない。つまり、一人称複数形のまま「わたしたちのファミリー」が語られ、空想され、妄想され、ときには捏造さえされる。
だから、「わたしたちのファミリー」が擬似であるからこそその繋がりが弱く儚いのと同様、語り手である「わたしたち」もその繋がりは弱く儚い。高校生活という一瞬の中でしか繋がれず、解体を前提とした共同体。でも確かにそこには儚くとも弱くとも繋がりはあり、繋がりの中には愛があった。
これから社会の中で生きていく上で、「わたしたち」は解体され、それぞれの「わたし」となってマジョリティの共同体へと属していく。その前段階のあの時代だからこそ繋がれた儚くて弱くてみじめで、ときには孤独なマイノリティの共同体の愛おしさ。素晴らしい。
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