Together Through Life

 

奪い尽くされ、焼き尽くされ



ウェルズ・タワー著、藤井光訳『奪い尽くされ、焼き尽くされ』を読んだ。
著者のデビュー短編集らしいが、全ての作品を共通して覆う荒涼とした空気。くそったれの日常は停滞し、夢は潰え、でも希望は燻る。だけど、どうしたって抜け出せない。だから登場人物は一様に苛立ち、怒り、だけどニヒルに諦める。
こうやって書くととても暗い小説のようだけれど、著者の丁寧な心理描写、表現に時折混じるユーモアが絶妙で、たとえ結末にすべてが台無しにされても放り出されても、とても深い余韻が残る。素敵な文学だけが持ち得る余韻。
アメリカンドリームすらなくなったアメリカを描く、という文句だけど、昔からアメリカはこういった芸術が多い。カーヴァーの小説といい、イーストウッドの映画といい。アメリカに日常を持っていればこそ、もっと深く味わえるといった類の作品。『奪い尽くされ、焼き尽くされ』で描かれるくそったれの日常こそアメリカに限ったことではないと言われればそうだけど、でもこの作品でもアメリカ人が読むのとそうでない人が読むのとでは感じ方が違うと思う。その辺りがアメリカ芸術の特徴なんだろうけど。アメリカはある種シンプルなはずなのに、あらゆることをアメリカの中でのみ考えがちという複雑さを持っている国だからかな…。僕はそういうアメリカ文学(あるいは映画や音楽)、嫌いではないのだけれど。
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