Together Through Life

 

歩いても 歩いても


是枝裕和監督『歩いても 歩いても』を観た。
今は離れて暮らすある家族が、帰省のために実家に集まった1日余りの様子を、丹念に練り上げられた脚本と構成、美しいシーンで紡ぎ出す、静かだけれど強く心に沁み入る作品。

セリフも自然で、舞台の実家は昔からの日本家屋。ごくありふれた家族の、ごくありふれた日常のひとコマに見える。
ただ、この家族には重く、悲しく、忘れることのできない恐ろしい過去があり、現在もそれぞれに抱えるものは大きくて、厳しい。
でも、そんなこの家族は特殊だろうか。人間の数だけその人生があり、家族の数だけそのあり方があるのだ。だからたぶん、特殊ではない。本当に、日本のある家族のある夏の日を掬い取ったという映画。だから、胸に迫る。

一番近い存在であるはずなのに、それぞれに人生があるから、家族は家族に嘘をつく。表面上では笑っていても、辛く寂しい思いを抱えているから。
ときどき、それが溢れ出す。自分の家族が背負っているものの重さに、戸惑い、立ち竦む。

でも、歩くしかないのだ、「いつも少し間に合わなくても」。
歩いても歩いても、辛く悲しい過去はいつまでも振り切れないかも知れない。
歩いても歩いても、ふとした瞬間に想いが溢れ出してしまうかも知れない。
歩いても歩いても、いつまでも取り繕って、嘘をつき続けるのかも知れない。
歩いても歩いても、やっぱりいつも少しだけ間に合わないのかも知れない。
だけど、歩いても歩いても、僕はどこまで行っても僕だし、僕たちはどこまで進んでも家族だ。

タイトルはいしだあゆみの『ブルーライト・ヨコハマ』の歌詞から採られている。

 歩いても歩いても 小舟のように
 私はゆれて ゆれて あなたの腕の中

愛憎渦巻く老夫婦を演じる原田芳雄と樹木希林の演技が圧巻。
スクリーンの中で家族が生きている、素晴らしい映画だと思う。
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