Together Through Life

 

若冲



澤田瞳子『若冲』を読んだ。
江戸時代の絵師伊藤若冲を描くフィクションではあるが、若冲はもちろん同時代を生きた与謝蕪村、池大雅、円山応挙なども登場し、彼らとの交流(これも著者の設定だろうが)も描かれる。流麗に流れる文章と江戸時代の京言葉が上方落語をも思わせる独特の世界観を造り、その時代に生きた人間若冲の息遣いまでもが感じられる書だと思う。
が、多分に著者の解釈が入りこんでいて、やはり違和感を覚える部分も多々ある。
例えば若冲は生涯独身だったわけだけれど、著者の設定では若くして妻を亡くし(この設定までは良い)、その弟との誤解、確執が若冲を創作に突き動かしたという解釈。
もちろん絵の解釈は人それぞれだけれど、僕には若冲が他人との憎悪の交換をエネルギー源にしたとか、他人と画技を競ったとか、彼の絵を観てそういう風には捉えられない。確かに孤高の絵師ではあったのだろうとは思うが、ただひたすらに対象にのみ強い関心を高め、それらを大胆に構成して緻密に表す。そこには確かに鬼気迫るものもあるが、反対に飄々とした空気を醸し出すものもある。
まぁそういった絵から受け取る印象や考え方はさっきも書いたように人それぞれだし、それを抜きにしてただ小説としては華麗な文体で細に至るまで描かれた時代や人物の趣は確かに若冲の絵をも思わせるし、それを楽しんで読めるエンターテインメント時代小説だと思う。
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