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かぐや姫の物語

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高畑勲監督『かぐや姫の物語』を観た。
観終えて、エンドロールでも涙が止まらない。観る者を完膚なきまでに圧倒する、高畑監督最高傑作だと断言する。
そこにはまず繊細な水彩画風のタッチを極めた画と、その描線の切れ端、彩り、背景の無に感情の機微を込めた演出の力がある。時に緩やかに、時に激しく、滑らかに動く線、四季と一日の時間と人の心を描き出す色彩。アニメーションにしかできない表現力が最大限に発揮させられている。
そして、誰もが知る日本最古の物語を題材に、しかもほとんど原作そのままにして力を込めて現代に訴えかけられるテーマ。そのテーマこそが、高畑・宮崎両監督がずっと追求してきたもの、「この世は生きるに値するか」。
月は悲しみも苦しみも、激しい後悔もない清浄の世界。反して、この地球は人々の感情が蠢き、すれ違い、悲しみと苦しみ、激しい後悔に溢れた禁断の穢れた世界だ。そんな世界で「生きるに値するか」。
高畑監督はここではっきりと言っている。「この世は生きるに値する」。
鳥、虫、獣、草木、花。それらは完全に美しく、死んだとしても回り回ってまた生きる。そこに人間がいる。感情を持ち、だからときにそれは縺れ、すれ違い、人を苦しめ、自身を苦しめ、苛まれ、悔やみ、取り返しのつかない、思ってもみないことをやってしまったりもする。
でも、それはすべて生きる手ごたえとなる。だから、その手ごたえがある限り、この世は生きるに値する。美しい自然に溢れるこの世を、そしてそこに生きる人間の愛を、その弱さも汚さもひっくるめて愛おしいものだと賛歌する。だから、手ごたえを持って生きよと力強く訴える。
高畑監督はそのキャリアの集大成として真正面からこのテーマに取り組み、おそらく最後となる作品ではっきりとイエスと言った。この上なく美しくダイナミックなアニメーションで、この美しい世界を、そしてそこに手ごたえを持って生きる人を描き切ることによって。
驚くべきは日本最古の物語でそれをやり、しかもこの日本アニメーションの集大成とも思える画を創り出したのが78歳だということだ。そこにはもちろん長いキャリアと培ってきた技術、自身の思いの深さがあるからこそだろうけれど、いや、単純にこの作品の技術とテーマを思うとき、78歳という年齢には驚く。
そして『風立ちぬ』で矛盾を孕む自身の全てを、ワクワクするようなアニメーションで曝け出してくれた宮崎駿とともに、やはりこの両人が長編アニメーションから去るのはジブリだけではなくまだまだ日本アニメーション界の大きな損失になってしまうなぁと、改めて思う。
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