Together Through Life

 

海よりもまだ深く

今日からパートナーも秩父に行っているし、家にはばあばと僕だけ。夕食は仕事帰りに済ませ、早めに風呂に入って2階に上がる。誰もいない部屋は綺麗で静かで、やっぱり少し寂しいもんだ。
是枝裕和監督『海よりもまだ深く』を観る。

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舞台は団地(監督が実際生まれ育った団地だそうだ)。高度経済成長の象徴として、中流家庭への憧れとして建設ラッシュに沸いた団地も、今や人口減少と少子高齢化を分かりやすく表す場所になってしまっている。今や団地に子供の声は響かず、老人たちがひっそりと暮らす。
言うなれば「なりたいものになれなかった」団地を舞台に、なりたい大人になれなかった大人たちが描かれる。
歩いても 歩いても』ではぶつかり合う存在として日本家屋の一軒家で存命だった父が、ここ団地では不在だ。ただ不在にしてその存在感はあまりに大きい。もはやぶつかれない存在だからこそ。
そんなあまりにも大きな影響から抜け出せない良多もまた父だ。なりたかった大人になれず、虚勢や意地ばかりを張って足掻く。
思えばどれだけの人が自分がなりたかった大人になれているのだろう。自分がなりたかった大人になれていないのに、僕たちは親となり子とどう向き合えば良いのだろう。
台風の夜に団地で良多とその老母、元妻が息子と過ごす夜。このたった一晩に描かれる人間の、大人のあざとさ、優しさ、だらしなさや執着心、諦念、葛藤…。なんだこれは。クライマックスらしいクライマックスではなく、あくまでも静かに淡々と描かれる画面から問いかけられる細かく、深い問い。生きていくということは、その問いに向き合い続けるということなのだ。
これまで同様、是枝監督は日常の些細な一場面を切り取り、そこからほんの少し動き出す部分だけを描き、こんなはずではなかった場所で、こんなはずではなかったと思いながらも生きる姿勢を示す。こんなに静かな映画でも深く心に迫るものが突き刺さるのは、ほとんど全ての人(大人)がそうやって生きているってことだからなのだろう。

 

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