Together Through Life

 

ハドソン川の奇跡

sally (500x333)

クリント・イーストウッド監督『ハドソン川の奇跡』を観てきた。
2009年に実際に起きた航空機事故。空港を飛び立ったばかりの旅客機がバードストライクによってエンジンを焼失し、ハドソン川に不時着して155人の乗客と乗組員すべてが生還した。それ自体「奇跡」に間違いなく、どの空港に着陸するのも間に合わないと最終判断したチェズレイ・"サリー"・サレンバーガー機長は英雄視され、歴史に語り継がれる美談であることも間違いない。
イーストウッドはこういった実話を描くとき、(『アメリカン・スナイパー』のとき同様)とても丁寧に、冷静に描こうとする。
表面的にも実質的にも「奇跡」であり「美談」である事故の瞬間、その前後、何があったのか。
サリー機長は、乗客の命を危険に曝したのではないかと国家運輸安全委員会(NTSB)に執拗に追い込められ、自身の判断が本当に正しかったのか、何度もフラッシュバックし、マンハッタンに旅客機が突っ込む悪夢を見、苦悩の淵を彷徨う。CAは大声を出して乗客を鼓舞し、着水直後にはフェリーやヘリで救助隊が一目散に救出に向かう。副操縦士はどこまでも機長を信頼し、徹底的に争う。そういった実際の行動、人間サリーの心の葛藤を深く描くことで、やはりドキュメンタリーとは違う迫真の作品が出来上がった。
ただ、泣き叫ぶ人もおらず、機長を責める乗客もいない事故当時。敵役として描かれながら(単純な勧善懲悪の映画にはしたくなかったのは分かるが)、最後にはサリーを褒め称えるNTSB。ほんのわずか、心に違和感のようなものが残る。
これまで徹底して冷静に、丁寧にアメリカを描き続けてきたイーストウッド。そこには冷静で丁寧であるが故の、アメリカに対する(自己)批評が含まれていた。それが、今回はただただ「アメリカの良心」しか浮かび上がってこないのだ。
単なる僕の考え過ぎかも知れないし、ただ単にたまにはそういう映画を(考えてみれば『ジャージー・ボーイズ』だってそうか)作りたかっただけかも知れない。でもやはりクリント・イーストウッドには迫真の「アメリカ」を、重層的に描き続けてもらいたいと、個人的には思ってしまう。

 

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