Together Through Life

 

アンの娘リラ


モンゴメリ著・村岡花子訳『アンの娘リラ』を読了。いわゆる「アン・ブックス」全10編の最後の物語。

読み進めて、驚く。
これまでひたすらにキラキラと輝き、人々の慈愛と美しい自然に満ち溢れていたアンシリーズとは一線を画す、灰色の空が世界を覆う苦難の4年間が描かれている。
これまで舞台はアヴォンリー、少なくともプリンスエドワード島から出ず、そこでひっそりと、それでも最上の幸せに包まれて来た日々は、ここでは第一次世界大戦という暗雲で覆われている。
ブライス家の男子たちも次々と出征し、彼らの無事を願い、祈り、ただ待つことしかできない女性たち。それでも前を向いて、戦争によって失われた幸せを取り戻そうと、いや、戦後にはきっと新しい幸せを創り出そうと、希望を捨てず、苦境に耐え、ただひたすらに愛する者たちの無事を祈る炉辺荘の女性たちの姿が、アンの末娘リラの成長を中心に据えて見事に物語られる。

この物語は、突飛な想像力と冒険心、どこまでも前向きなアン・シャーリーの衝撃的な登場によって世界中を虜にした第1作『赤毛のアン』とは違う性質ながらも、愛と希望を躍動的に描いている点において、それに匹敵する傑作だ。
典型的な末っ子気質のリラが戦争を体験することによって力強さと前向きさを獲得し、母親に負けない輝きを放つ魅力的な女性に成長していく過程が見事なまでに描き切られている。

全ての登場人物が、戦時中の重苦しさをはね返し、ひたすらに未来へと進むその姿は感動的だ。中でもブライス家の子供たちが生まれたころから彼らを支え続けたメイド、スーザン・ベイカーがとても魅力的。
また、長男ジェムを4年間(!)駅で待ち続け、年老いて、病に罹り、それでも駅から離れないジェムの愛犬ドッグ・マンデイ。戦争が終わり、ようやく帰還した主人との再会場面では、電車で読んでいたにも関わらず涙が溢れ出て止まらない。
また、愛するケネスとの再会を果たしたラストシーンでのリラの台詞がとてもキュートで、これまた涙が止まらない。

完結編にして、最高傑作。
だから、やっぱりアン・シャーリーがいる世界が愛おしくて、これからもきっとアン・ブックスを何度も読み返したくなるのだろうな。

 

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